鹿踊(ししおどり)

  • 本来、鹿踊は鹿の供養のために始められたとされ、念仏踊として伝承されてきましたが、祈祷の目的が多岐にわたり、また芸風にも創作の手が加えられて、住民の娯楽の芸能に変化していきました。


(行山流口内鹿踊)

 岩手県内の鹿踊は、太鼓系鹿踊と幕踊系鹿踊の二種類が伝承されています。この二種類の鹿踊は、南部領と伊達領の藩境によって伝承地が区分され、太鼓系鹿踊は伊達領内、幕踊系鹿踊は南部領内に伝承されています。しかし、藩境を越えて伝わったものもあり、特に太鼓系鹿踊は藩境に近い南部領内に数多く伝承されています。

【 北上市に伝わる鹿踊 】

北上市には、太鼓系鹿踊が伝承されています。太鼓系鹿踊の最大の特徴は、踊り手自身が自ら太鼓を持ち、歌もうたい、重さ15キロの装束を身につけ踊る点で、一人三役をこなすハードな芸能です。 踊り手は8人で構成され、踊り手の太鼓以外のお囃子は付かず、三列の体系を組み、その中心に「仲立」というチームリーダー、両脇と後ろに7人の踊り手を配して踊ります。 仲立の歌や太鼓のリズムが合図となりそれぞれ担当する芸を演じますが、持ち場により芸の所作が異なることから、一人の踊り手が欠けても演目をこなすことが難しく、チームの結束が芸の良否を左右します。