山伏神楽

  • 山伏神楽は岩手県内にくまなく分布していて、しかもその芸態は修験道の影響が今なお色濃く残っているものから、仏教色を払拭して唯一神道に近い神楽として演じているものまで、その種類はさまざまです。


(早池峰岳流更木神楽)

しかし、これら山伏神楽に共通しているのは、信仰の基軸になっている「権現ごんげん」です。神や仏は人間の目に見えない存在なので、人間の目に見えるように具体的な物を一時借用すること、つまり神や仏の仮り姿になって現れることを権現と呼んでいます。山伏神楽の場合の権現は「獅子頭」であり、この獅子は単なる動物ではなく、神様や仏様が獅子の姿を借りて人間の前にその存在を示していることになります。



山伏神楽のうち、最も広い分布を見せているのが「早池峰はやちね神楽かぐら」です。修験者集団が霊山として守り続けてきた早池峰山の南登山口の岳たけ集落に伝承されている神楽と、南に十二キロ下った大償おおつぐない集落に伝承されている神楽の二つを早池峰神楽と総称しており、昭和五十一年に国の重要無形民俗文化財第一号に指定されました。(出典:いわて民俗芸能入門)